【047】汝は宇宙人なりや?【ホラー・ミステリー】【オリジナル小説】
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047―シトウ

「シャディさん、貴方の目論見はこうです。昨夜敢えて襲撃をしないことで、自らを人間に思わせること。そして襲撃することで起きてしまう二対二によるランダム処刑を避けること。状況は貴方が宇宙人であることを示しています」

皆の視線が僕に集中する。

ガレンの狙いは、今日僕を追放して、明日フセインを残す。ガレン、フセイン、残り一人の人間で議論が開始するわけだが、ガレンとフセインが協力すれば、残りの人間に二票集まって、宇宙人側の勝利が決まる。

僕を追放すれば、このゲームは宇宙人の勝利で終わる。僕はゆっくりと重く閉じていた口を開く。

「今日僕はこの村の過去を知った。そこには三人の人間と三人の宇宙人の悲しき物語があった」

ガレンと、そして黒い外套は僕の言葉に少し反応したように見えた。

ミラとハリムとフセインは表情もなく、ただ僕の話に耳を傾けている。

「ある人間はこの村の行く末に絶望し自殺した。ある人間は片思いだった壊れた少女と共に村を捨てた。ある人間は信じていた、大好きだった村が尽く消えて、闇に堕ちて壊れた。」

「また作り話ですか?」

ガレンは表情を変えず、いや抑えてその言葉を口にする。

「ある宇宙人は村のためを思って与えた、『しあわせ』に殺された。ある宇宙人は本能に抗いながら必死に人間社会に馴染もうとし、大好きだった村と少女がつけてくれた名前を背負い続けた。ある宇宙人は同胞と人間に裏切られ、冷徹で、冷酷な殺人鬼に姿を変えた」

「流石にもう引っ掛かりませんよ。人間だったクレトンもブレンドンも訳の分からない作り話に殺された。それは悪手ですよ、シャディさん」

飄々としていたガレンが少しずつ冷静さを欠いていく。

「だけどジェイデンも、ダンも、あの少女も。ビリーも、マイアも、ウェルも必死で村を救おうとした。みんな一つの希望を抱いていた」

先に待つものが絶望だったとしても、彼らは必死に前に進もうとした。

「マイアは生きることに耐え続けて、周りに馴染もうとした。かつて村で知った感情をもう一度探して、新しい居場所を見つけた。だからウェル、あなたなら、あなたなら彼女の笑顔と涙の理由がわかるはずです」

ガレンは何も語らない。ただ僕からは彼が感情を抑え込んでいるように見えた。

僕も感情的になってしまった頭を落ち着かせる。

「今日、僕はフセインに票を入れる。僕に票を入れれば人間は負ける。だけど僕がガレンに票を入れようと言っても、皆僕を疑うと思う。だから僕は今日フセインに入れる」

ガレンも、ミラも、ハリムも僕の発言に驚きの表情を浮かべる。一番驚いているのはフセインだ。

マイア追放、シャディ襲撃、フセイン追放。この一連の流れが僕の考えた作戦の全てだ。計画の全てに欠けがあってはいけない。一定の信頼を得ながら、一定の疑いも得なければならない。

僕の宇宙人宣言には三つの狙いがあった。

一つ目はフセインを味方に付けて、僕の発言で釣られた宇宙人を追放すること。

二つ目は宇宙人を追放して、次の日限りなく人間に思われてしまう僕を襲撃位置に持ってくること。

そして三つ目はフセインを追放すること。

未だミラも、ハリムも誰が宇宙人であるかは曖昧で把握できてないだろう。僕が宇宙人のガレンを追放しようと言ったところで、宇宙人疑惑の晴れない僕に賛同する人間はいないと思う。

それにそう言ってしまうと、フセインの票が変動してしまう。

ただこの盤面ではもはやフセインとの共闘関係は必要ない。今はフセインの一票よりミラとハリムの二票の方が大事だからだ。

だからもう宇宙人の演技はできない。

それにガレンの議論のコントロールは完璧だ。ガレン追放が成功する可能性は無に等しい。

疑惑のある僕と人間側の利害を一致させるためのトリガーは、確実に利敵行為をしているとわかる人物を追放することだ。

後は皆を説得するしかない。

「もう一度言います。僕はフセインに投票する」

「おい、あんたが宇宙人なら何の意味もないぜ? その選択は」

フセインは僕の言った言葉が信じられないらしい。

「僕は宇宙人じゃない。人間だ」

今日僕が宇宙人の襲撃を防いだことで、このゲームは本来今日終わるものだったが、一日延ばすことができた。だからここで人間であるフセインを追放してしまっても何の問題もない。

「今日、僕かミラかハリムの内誰かが追放されてしまったら、明日残るのはガレンとフセインと残り一人の人間だけ。ガレンとフセインの共闘関係が出来上がってしまったら、僕ら人間の負けです」

僕は今の状況を皆に説明する。しかしフセイン追放が必ず納得できるものではないことはわかっている。

「今日フセインを追放したとしても、今日ゲームが終わる可能性は低いです。だから今日の夜、必ず誰かが襲撃される。その意味をわかっていますか?」

ガレンがフセイン追放の穴を突いてくる。

「そこまでして人間に見られたいのですか?」

「皆に伝えたいのは今日ガレンを追放すれば、ゲームが終わると言うこと。ガレンから見ても僕の追放は変わらない。この二択は皆にとって重いものだとはわかっている。だから今日はフセインに票を入れて欲しい。犠牲が出てしまうのもわかっている」

皆に今の僕はどう映っているのだろうか。

「なぁ、あんたらどっちが宇宙人なんだ?」

フセインの言葉に答えることなく、ガレンは皆を説得する。

「今日、ゲームを終わらせます。だからシャディ追放で問題ないです。確かにシャディの発言は、みなさんと利害が一致しているようですが、それはシャディが自分を人間に思わせるための罠です」

今僕に考えられ得る最善手を打っても、ここまで押される。

「でも今は判断材料がない。僕に投票すべきか、ガレンに投票するか迷っているなら、一日待って、情報を集めた方が良い」

「最初に言った通り、この状況はあなたが宇宙人であることを示している。逆に聞きましょう。なぜあなたは私を宇宙人と思っているのですか?」

僕が彼を宇宙人だと決め打ったのは、襲撃時の声だ。皆に襲撃を防ぐことができたことを伝えるべきか。いや駄目だ。信用してもらえない。

「僕がマイアを宇宙人だと確信したのは、僕が昨日の議論冒頭でフセインを追放しようと言ったとき。昨日の時点で、フセインが追放されれば、人間サイドは負けていた。だから真っ先に僕の発言に同調した彼女は怪しかった。そして僕はそんなマイアとガレンが対立している場面をみたことない。初日から攻撃的だった彼女はあなたを一度も攻撃していなかった」

「フセインさんは、昨日の時点は誰から見ても追放したい対象でした。現に私は昨日フセイン追放だと思っていました。宇宙人はとても狡猾ですから。そういう作戦もあるのかと私は思いました。彼女も人間ながらそう思ったのでしょう。それでマイアが一度も私を攻撃していないことが私を宇宙人だと裏付ける根拠になるのですか?」

確かに僕の根拠は弱い。そしてそれ以上にガレンの発言に穴が見つからなかった。彼は強い。ここからどうする?

形勢は圧倒的に不利だ。完全に昨夜の襲撃未遂を利用されている。ガレンを宇宙人として対立させたのは、今日フセインを追放して、皆にガレンについて考察させる時間を与えれば、信用勝負に持ち込めると思ったからだ。

ただ彼の名前を出したのは完全に悪手だった。根拠薄弱なまま戦おうとした僕の弱さのせいだ。どうすればいい。

「ガレンさん、シャディ。一ついい?」

そう口に出したのは、ハリムだった。

「俺はフセイン追放でも良いと思ってる」

フセイン追放は僕ら人間の勝ちを近づけるものだが、ガレンの言う通り、人間サイドの犠牲を強いる選択だ。

ハリムの踏み込んだ一歩。

勇気の一歩。

彼の選択はこの圧倒的に不利な状況をあっさりと覆してしまうほど、大きくて、強かった。

 

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