【044】汝は宇宙人なりや?【ホラー・ミステリー】【オリジナル小説】
スポンサーリンク

044―サヨナラ

1933年5月18日 晴れ
誰も私達の話を聞こうとしなかった。私達を見ては、宇宙人に洗脳された可哀想な人達とか人類の敵だとか罵倒される。彼女達が村の幸せを、希望を願って与えたしあわせの石が大人達を狂わしてしまった。マイアさんが言うには、強硬派連中は自分たちの調査結果を聞いて、ほぼ間違いなくこの村に直接やってくると言った。ダンとジェイデンはこの村から逃げようって言っているけど、私は大好きだったこの村を捨てる勇気はない。私はどうすればいいの?

1933年5月19日 晴れ
今日、バートさんの仕事部屋でバートさんとビリーさんが言い争っているところを見てしまった。ビリーさんはバートさんを説得できればみんなの避難ができると考えたのかもしれない。だけど現実はそんなに甘くはなかった。バートさんは全くビリーさんの話を聞かないし、意味不明なことを口走っては、声を荒げた。ビリーさんはバートさんから石を取り上げようとしたけど、バートは子供のように駄々をこねて決して渡そうとはしなかった。大好きだったこの村が消えていく。

1933年5月22日 曇り
今日この屋敷に客が来た。この国に住む人なら誰でも知っている巨大企業だ。最近になって、ようやく科学者がウランの利用価値に気付いたらしく、この企業はその情報を元にウランを買い漁っているらしい。そしてバートは莫大な目先のお金に釣られて、喜んで契約を交わしてしまった。経営の勉強をかじっていたジェイデンはこの契約の後、物凄く怒っていた。もうむちゃくちゃだ。私達のためにここまでしてくれた彼女達をどうしてこうも簡単に裏切れるのか。信じられない。

1933年5月24日 雨
ビリーさんが殺された。頭を単身銃の弾丸で貫かれた死体を庭の花壇で発見した。犯人はわかっている。今朝死体を運んでいるバートの姿を見た。二日前の契約を知ったビリーさんが、多分バートを咎めに行ったんだと思う。それで殺された。あいつだけは許さない。

1933年5月30日 雨
記憶が曖昧でよくわからない。だけど今覚えていることを書きたい。まず空に幾つもの宇宙船が浮かんでいた。奴らは見たことのない銃を取り出して、空にそれを放った。そこから私は数時間ぐらい意識を失っていたと思う。次に覚えているのは食堂に集まっていた大人達。記憶は曖昧でよく覚えていない。追放がなんとか、襲撃がなんとか言っていた。そして次に覚えているのは目の前に転がっていた死体。もう意味がわからない。

1933年5月31日 曇り
なんとなく理解した。今私達はゲームをさせられている。食堂に集まっていた九人で、殺し合いをしている。この中に二人、新兵器による洗脳を受けた人間がいて、その人間は夜になると、他の人間を襲う。昼には生きているみんなで話し合って、洗脳を受けているだろう人を追放する。洗脳を受けていない人間が勝ったら、他の村人たちを生かしてくれる。洗脳を受けた人間が勝ったら、皆殺しだそうだ。奴らの新兵器のテストはほぼ完了したらしい。後は自由に楽しめだそうだ。ジェイデンとダンはどこにいるの? マイアさんとウェルさんはどこにいるの? こんなのおかしいよ。

1933年6月1日 雨
もうぐちゃぐちゃだ。また一人ころしちゃった。気持ちいい。人を殺すのが楽しい。頭の中がぐちゃぐちゃだ。今日も私は追放されなかった。そしてこの後また人を殺せる。わたしはしあわせだ。これが狂気。これが絶望。

1933年6月2日 雨
ついにあいつを殺した。ころしちゃった。バートはもう帰らない。あいつは無様にわたしに命乞いをしてきた。可哀想なのでころしてあげた。何回も何回も滅多切りにしてあげた。それに気づいたらゲームが終わっていた。どうやら私の勝ちらしい。目の前の知らない宇宙人はとても喜んでくれた。よほど兵器の出来が良かったらしい。何だか私もうれしい。

1933年 6月3日 雨
ダンがよくわからないけど、今となりの部屋で必死になにかの準備をしていた。屋敷の地下通路を使って逃げるらしい。私が勝ったから逃げなくていいのに。ダンが言うには、私の洗脳を解くために、マイアとウェルを殺さなければいけないらしい。よくわからないけど、そっちの方が宇宙人的に面白いからだって。ダンは宇宙船に忍び込んで、大量の抑制剤と鎮痛剤となんか見たことある銃を盗んできた。泥棒はだめなのに。ダンの準備が終わったらしい。今も私を呼び掛けている。ダンはビリーさんが着ていた黒いコートを着ている。マイアさんたちのことを今聞いたら、追放されるらしい。ゲームの方の追放じゃなくて、この地球に追放されるらしい。故郷に帰れないのかな。もう行かないと。さようならリアナ村。ようこそ絶望。

前回

次回

Follow me!

スポンサーリンク
おすすめの記事