【017】汝は宇宙人なりや?【ホラー・ミステリー】【オリジナル小説】
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017―ゲーム

「約七十年前にこの村で行われたゲーム。この村の住人を死に追いやったゲームだ」

僕はこの状況が呑み込めず、呆然としていた。

ゲームとは何だ?

死に追いやったとはどういう意味だ?

目の前に広がる非現実に僕は唯々戸惑うしかない。

「奴らは我々の逆鱗に触れた。しかし、我々もそこまで無慈悲じゃない。一方的な虐殺などつまらぬ圧制者がするものだ」

力強い声が僕らを圧倒する。

「我々が用意したゲームは――『追放』。夜に一人ずつ殺す我々の同胞。昼に一人ずつ追放する君達人間。君達はこの中にいる二人の同胞を追放したら勝利だ。逆に、我々の同胞が君達を同数にまで減らしたら我々の勝利だ」

今の僕には、怒りも、悲しみも、不安も、一切の感情が湧かない。

この突然の状況に感情が追い付いてない。

僕に出来るのは、呆然と目の前の光景を眺めることだけだった。

「君達は追放前に一時間だけ議論が許される。その議論の中で一番怪しいと思った者に投票し、最も票を集めた者がその日の追放者だ。追放者はその後、すぐさま処刑する。議論は五時から六時の間。それまでの間は何をしても構わん。己の生存だけを考えろ」

黒い外套の勝手な物言いに、僕のように混乱する者もいれば、怒りをまき散らす者もいた。

「なんで俺らがそんなゲームをやらなきゃいけねえんだ。ふざけるな!」

クレトンが黒い外套に向かって、怒声を上げる。

「言っておくが、君らに選択権はない」

黒い外套は袖口から、何か自動拳銃のような物を取り出す。

しかし、それは普段僕らの見るような拳銃の形や色とはかけ離れている。

全体は白色で塗装され、所々に用途が推測出来ない黒いパーツが取り付けられている。一般の拳銃でスライドやリアサイトと呼ばれる部分は、太く出っ張っており、気味の悪い緑色の光を発している。

例えようもないが、近未来兵器と言われれば納得できる物ではあった。

黒い外套は、その銃口を僕らに向けるのではなく、空に向ける。

「我々から逃げられると思うな」

そう言って黒い外套は引き金を引く。

「何だこれ……」

クレトンは急に頭を抱え、地面に膝をつける。

僕もそれを冷静に眺める暇もなく、四つん這いの格好で項垂れてしまう。

――気持ち悪い。

僕の脳に何か大きな違和感を突き付けられたそんな風に感じる。

脳が直接揺さぶられるような感覚。
視界はぐにゃりと乱れ、気を強く持っていないと、今にも意識がシャットダウンしそうだ。

「この拳銃には暗示の効果がある。君達の意識は、午後九時には自動的に消える。これはゲームだ。そうでなくては面白くない。起きることが出来るのは我々の同胞だけだ」

朦朧とした意識の中、黒い外套の言葉を次第に理解していく。どうやら僕の周りも全員この激しい酔いにうなされていたようだ。

いや、もしかしたらそういう演技なのかもしれない。

「我々は君達に希望を与えた。この希望を生かすも、殺すも君ら次第だ。議論は午後五時から、食堂で行う。それではこの村、『十人』での殺し合いを楽しみたまえ」

悠々自適に、屋敷方向へと歩いていく黒い外套。

何が希望だ。
勝手にこんなゲーム押し付けておいて。

僕は四つん這いの格好から、仰向けになって空を見上げた。

今日、ステラが消えた。
追放で誰かが消えて、朝起きると誰かが消える。

こんなことがあっていいものか。

これが未知を知りすぎた僕らの代償なのか。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

現在時刻は午後三時。

もはやこの屋敷の中で、会話をしている者はゼロに等しい。各々、自分の部屋に戻り、ゆっくりと時間が過ぎていくのを待っている。

未だにこの状況に対しては、半信半疑だ。

あの男が言っていることが本当なら後三時間で、『追放』という残酷なゲームが始まってしまう。

しかし、まともな推理をする体力がもう僕には残ってない。

あんなことがあったせいで、身体と精神共に疲れ果ててしまった。

できるならもうこのまま寝てしまいたい。このまま毛布にくるまって何も考えずにいたい。

しかしそれは彼らからしたら逃げに値する行動だ。

『逃げられると思うな』そんな黒い外套の言葉が脳裏を木霊する。

このままこの部屋に閉じ籠っていたら、僕もステラのように殺されてしまうのだろうか。
彼が持っていたのは、僕が見たことないような未来兵器だった。
きっと彼らにとって僕らを殺すことなど造作もないことなのだろう。

彼らにとって人を殺すことなどゲームに過ぎない。

恐怖と不安が僕の心を支配する。もう何も考えたくない。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

僕はベッドから起き上がった。

現在時刻は四時四十三分。

軽い食事を摂って、決戦の場へと向かう。

――覚悟なんてできていない。

自分の生存を一番に考えた結果、行くしかないという結論に至っただけだ。

恐怖と不安で脚が震え上がっている。

ゆっくりと少しずつ前進していく。

そうしている内に、食堂へと着いてしまった。食堂の扉は閉まっている。僕はゆっくりと扉を開ける。

「これで全員来たな」

いつも通りの食堂に、異常な黒い外套の声が響く。

僕の扉を開ける音に皆一度は反応したが、そのまま視線を逸らし各々の方向へ目を向ける。

いつもの円卓には、椅子がない。
立ったままやれということなのだろう。

椅子はないが、全員いつもの食事と同じ位置にいるので、僕も同様に、自分の定位置に向かう。

「それではゲームを始めよう」

 

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