【014】汝は宇宙人なりや?【ホラー・ミステリー】【オリジナル小説】
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014―フカク

「見つけた……」

遂に僕は未知との、神秘との遭遇を果たした。

必死に頭を回転させるが、僕の記憶にある言語ではないことは確かだ。このリアナ村はかつて、正体不明の存在と契約を交わしていた。
しかも正体不明の存在は、当時の技術水準より高いことは明らかだ。

――いや、冷静になれ。

ウラン鉱石の取引はただの研究のためのものかもしれない。正体不明のサインも、本当に僕の知らない言語ということもあるし、単純にサインが汚くて読めないだけかもしれない。

――冷静に。

科学者なら全ての可能性を追うべきだ。先入観や思い込みは間違った方向に決め打ちをしてしまう。

――冷静に。

なら、技術援助とは何だ。

僕は深呼吸をする。

僕の考えるあらゆる可能性がある一つの方向に向かってしまう。可能性のベクトルがある一点を指してしまう。科学者としてこれがダメなのはわかっている。
ただ頭で必死に否定しようと、心がそこに追いついていかない。

僕の心は高揚し、浮かれっぱなし。地に足がつかず、ランナーズハイだ。

もう一度、深呼吸をする。次はゆっくり、深く。何度でも、何度でも。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

バートの仕事部屋にあったのは、結局それだけだった。

正体不明の言語も1929年の契約書でしか見つけられなかった。
契約書など手掛かりになりそうなものは一通りカメラに収めた。

あとは四つのベッドルームの探索だけだ。

バートとその夫人とその息子一人と誰かの部屋。気になるのは、バートと家族構成に一致しない誰かの部屋だが、先ほどの一件もあったので、先にバートの部屋を探索しよう。

僕は間取図を見て、一番大きい部屋であるバートの部屋の前に来た。部屋の扉の取手に手を掛け、その扉を開けようとする……が、開かない。

ガッという音だけが空しく響いた。

今まで、扉の鍵が掛かっていなかったのが偶然だったのだろうか。それとも、この部屋に何か見せられないようなものがあるのか。
とりあえず、今はこの部屋は置いておくしかない。他の部屋の探索を始めよう。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

僕は今、ミラの祖母であるステラの部屋の前に来ている。

バートの部屋以降、三つ全ての部屋が開かなかった。どれも鍵がかけられ、調査という名目で来ているが、無理やり開けるのは流石によろしくない。
だからこうして、この屋敷の管理をしていたというステラの許までやって来た。

ステラなら、この屋敷の全ての部屋の鍵を持っているか、もしくはその場所を知っているかもしれない。

ただ僕はご年配との会話には慣れていない。緊張で口を滑らせなければ良いが。

コンコンと軽くノックをする。

中から、「はーい」と優しい温もりを感じる声が聞こえたので、その声を合図に扉をゆっくり開けた。

内装は僕の部屋と、皆の部屋と一緒なのだろう。シングルサイズのベッドに、デスク、クローゼット。高級ホテルのシングルルーム並みの設備がそこには整っている。

ドアを開けてすぐに、デスクに座っているステラを発見した。

手紙か何かを書いているようだが、来客の存在を機にその手を止める。

「おやおや、誰かと思ったらシャディだね。こんな老いぼれに何か用かい?」

ステラの声には年季の入った、何か大きな樹木に包まれるような温かみがある。

「三階の部屋に行けなくて困っているんですけど、この屋敷の鍵ってどこにありますか?」

「うーん、わかんないねぇ。あの部屋はずっと入れなくて……ミラと一緒に探してはいるんだけど……鍵はどこにもなかったよ」

ずっとこの屋敷を管理していたステラでさえ知らないとは。そもそもあの四つの部屋だけに鍵がかけられている理由は何だろうか。必ずそこには意図があるはずだ。鍵がどこにもない理由も気になる。

わからない。

数十秒の沈黙の末、僕は口を開く。

「そうですか……教えてくれてありがとうございます。僕も鍵探してみます」
基本的にほぼ全ての場所は探索したのだが、鍵らしきものはなかった。ステラに一礼をして部屋を去ろうとする。

が、ステラに声をかけられた。

「お前さんはほんとに礼儀正しい子だね。しかもあのC大学に通っているそうじゃないか」

突然の賞美、というより持てはやされたと言うべきか。意図が掴めないが、しばらく聞いてみる。

「うちの孫娘を嫁にどうだ?」

ステラの孫娘は、勿論のことミラだ。ミラが僕の嫁に貰えるなら、正直まんざらでもない。男なら誰だって、そう思うくらいの家事力とそれに準ずる美貌を持ち合わせている。
そう思わない人は、もはや男とは呼べないのだろう。

「本気で言っていますか?」

笑い交じりに話す。冗談を軽く流せるくらいのコミュニケーション能力は流石にある。

しかしステラの表情を見ると実際そうでもないらしい。どこか真剣で、気迫のこもった表情だ。

「できればわたしが死ぬ前に、ミラのウエディングドレス姿が見たかったんだけどねぇ」

まるで自分の死期を悟っているような言い方だ。昨日からの様子じゃ、特別何か持病を抱えているというわけでもなさそうだ。老いてくると、自分に死が近づいているとわかるものなのだろうか。

「彼女ならきっと素敵な人が現れますよ」

しかし、

「ミラには幸せになって欲しい」

――わたしと違ってね。

抑揚なく、胸の内から最後の空気を吐き出すようにそう呟いた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

夕食を摂り、自室に戻る。
今日あった出来事を振り返る。視線の正体を見つけ、この屋敷主バートとその家族を知った。そして正体不明の存在を確認した。

数行でおさらい出来る一日。

しかし今までの人生の中では、限りなく濃い密度の一日だ。

――明日はどんな未知に出会えるのだろう。

 

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