【003】汝は宇宙人なりや?【ホラー・ミステリー】【オリジナル小説】
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003―ジョウホウ

「そうそう、シャディ君。時に君は宇宙人を信じるかい?」

後ろから意気揚々と声をかけられた。宇宙人という言葉が聞こえ、聞き間違いかとも思ったが、疑いようもなく耳から脳内へとその言葉は伝わって来た。

混乱してきた。

質問の意図がわからない上に、そもそもジェイコブは再現性のある事柄しか認めないような科学者らしい科学者だったはずだ。

要するに、ジェイコブは自分の目で見えないような物を信じていない。そんなジェイコブの口から宇宙人という言葉が出るとは。

僕の脳内は質問に対する答えを探そうと、ゲームのローディング画面が如く、回転を繰り返す。

「いいえ、正直言ってあまり信じていません。まず有力な客観的証拠がありません。よく目撃談か何かが語られますが、宇宙人やUMAはメディアの大好物ですから、そのほとんどが捏造でしょう。残りはただの勘違いです。実際の宇宙飛行士が宇宙人を語ったりしますが、興奮状態から来る思い違いだと僕は思いますが」

先生の前だからと饒舌に語ったが、少し嘘をついてしまった。客観的証拠が欠けているのは事実だが、未だ宇宙の九割は謎で満ちている。宇宙はこんなにも広いのだから、この広大な宇宙の中に一匹くらいはいてもおかしくはないと思うのが実のところ僕の本心。

そうであって欲しい、宇宙に焦がれ続けた幼き頃の僕、童心もそう囁いている。

「実に君らしい答えだ。宇宙人についての見解は科学者の中でも様々だ。そういう立場もあるだろう」

特段、僕のような立場は少なくもないだろう。その上、僕はまだ学生だ。わからないことも多い。そうなるとジェイコブがどういう見解を出すのか気になって来た。

ジェイコブは「なるほど」と軽く頷き、ここからが本番だと言わんばかりに軽く胸を張って、話の本題を繰り出そうとする。

「実は君に面白い話があってね。NASAの秘匿情報なんだが……あまり大きい声は出せなくてね。後で私の部屋に来てくれないか?」

好奇心が思考を遠ざける。今の僕に裏もなければ、表もない。僕は深く考えることなく、すぐさま二つ返事で了承した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

一つ講義を控えていたジェイコブ、残り半刻ほどの時間を潰すため、僕はキャンパス内にあるカフェスペースに来ていた。図書館に行っても良かったのだが、考えごとをするのにはあまり向かない。適度な生活音や雑音が何となく脳にとって心地が良いのだ。

ブラックコーヒーの苦みと芳醇な香りと共に僕は思いを巡らす。

ジェイコブの口から出た『NASA』という言葉。ここまで来て聞き間違いということもなかろう。

『アメリカ航空宇宙局』。宇宙空間の開拓、科学的発見、そして最新鋭機の開発を目的とする連邦機関。宇宙が好きな人間なら誰もが憧れる機関であり、この大学からも多くの者がNASAでの就職を望んでいる。

そんなNASAの秘匿情報だ。気にならない訳がない。

アメリカとソ連の宇宙開発競争の時代から今の情報化時代。

NASAは様々な情報を機密指定して保持、時には隠蔽してきた。ジェイコブの口振りから察するに、それは宇宙人に関する情報なのだろう。

NASAは宇宙人でも捕獲したのだろうか。

それとも本当に、都市伝説のように宇宙人と密約を結んでいるのだろうか。

そもそもジェイコブはなぜそんな機密情報を知っているのだろうか。

様々な想像が頭を駆け巡る。

時刻は五時。あれこれ考えている内にあっという間に半刻過ぎていたことに僕は気付いた。僕はコーヒーの会計を済まし、その足でジェイコブの許へ向かうことにした。

 

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