

002――キタイ
厳しい残暑が続く八月上旬。夏特有のねっとりとした空気に若干の不快感を覚えつつも、僕は明日からの小旅行に心を躍らせていた。
「準備はできたかな」
バックパックに凡そ一週間分の衣服と軽い食事、その他カメラ等の旅行必須の品を詰め込み、大方の準備を終えた。
期待と荷物でバックパックも大きく膨らむ。誰も居ないのが幸いか、るんるんと能天気な鼻歌が飛び出してしまいそうな勢いで、僕の心は踊っている。
行く先は『リアナ村』。
人口規模は全土の中でもかなり小さい方だが、大きな山脈のある山岳地帯と広陵の牧草地帯で有名な州で、豊かな自然目当ての観光客も多い。また数々の名作SF映画がこの州で撮られたこともあり、この聖地に集まるファンも多い。そんな州の中でも抜きんでて人口の少ない過疎集落にこのリアナ村はある。
かつてウラン鉱山の採掘で栄えた町だったらしいが、閉山に伴いゴーストタウンとなってしまった。