【第七話】少女×秘密=愛?【R18】【オリジナル小説】

第七話――ヒミツノトキメキ

 突き抜けるような快楽に、視界は白と黒に明滅する。

 性に不慣れな可憐な少女に、いきり立った男の性器を口で愛撫され、為すがまま翻弄される。おおよそ味わったことのない麻薬じみた劣情に、恥辱が心を塗り潰した。

「はぁ、はぁ……」

 湿り気を帯びた奈月の視線が額に突き刺さる。そんなサディスティックな視線にぞくぞくと萎びた肉茎が脈動し、嫌でも期待してしまう。

 己は紳士である以前に、健全な男子高校生なのだとたくらみの微笑みがまざまざと現実を押し付けた。

「ふふっ。まだまだ終わりたくないってあなたのココは言ってるけど……」

 射精し終わったばかりの割れ目を白く柳のような細指がつつく。キスで拭いきれなかったザーメンのぬめりを指に巻き付けるようにして、怒張寸前のペニスから奈月は手を引く。

「……もういいだろう、奈月」

 無論、そんなこと聞いたって奈月の暴走は止められはしない。立宮自身、それは痛いほど理解しているはずだ。

 だからそれは一時的に賢者モード(れいせい)になった心身の最期の悪あがきだったのかもしれない。

「ダーメ、」やはり奈月は否定する。情欲に溺れた眸、それでいて純真な眼差し。淫魔のようで、少女のようで……。

「……今日だけは……正直な私でいさせて」

 時々、彼女はそんな貌をする。何もかも諦観して、悲哀に沈む表情と、ありのままであろうと無理にでも微笑みを作る表情。

 彼女の言う、演技がどこまで含んでいるのか定かではない。最も人間なんてものは表と裏のたった二面だけでは語り尽くせない。

 完璧を貫こうとする彼女と、完璧でない自分を嫌う彼女、そして完璧であろうとする自分を嫌う彼女。その矛盾した心の在り方が、彼女にほころびを生み、いびつを生んだ。

 〝正直な私〟文字にすれば、たった四文字の短いセンテンス。それだけの言葉にどれだけの意味が含まれているのか、頭の中ではんすうして、彼女の貌を見上げてみる。

 やはりその表情は葛藤の中にあった。

 彼女にとって〝正直な私〟とは何だろうか。周囲に向ける微笑みも優しさも全て虚実でしかないのか。時折見せる純真無垢な眸も、少女のような無邪気さも、同じく偽りでしかないのか。

「……君にとって……いや……」

 何かを問いただそうとして止めた。漠然として、形にもできない何か。口に出そうとして、途端に霧散してしまう。

「……そんな辛気くさい顔しないでよ。あなたが苦しんでいるところを見せて。あなたが悦んでいるところを見せて。今は一緒に、楽しも?」

 魂が抜けたように放心した立宮の両手を掴み、頭上まで上げる。奈月は右手で立宮の両手首を強く押さえ、左手は襟元のスカーフに手を掛けた。するりと引っ張られたスカーフは一枚の細長い布になり、それを立宮の両手首と、頭上にあったボール入れの金属の脚に巻き付け、固結びで強く留めた。

「どう? これでもう逃げられないでしょ?」

 両手を封じられ、腰上では奈月の全体重を乗せられる立宮。

「ああ……そうだな」

 いや本当は簡単に逃げられたはずだ。今だってこの程度の拘束などやろうと思えば簡単に抜け出せる。それでも抵抗しないのは、そこに心を繋ぎ止める強い意志があったからだ。

 衣替えのために奈月が着ているのは薄手の一枚のシャツのみ。スカーフがなくなり、はだけた胸元から一つ一つボタンを外していく。

 徐に肌が露出していった。

 鎖骨から少しずつ。雪のように白く、赤子のように滑らか。

 遂には全てのボタンが外し終わり、煩わしそうに着ていたシャツを……放り投げた。

 ――これは……まずい

 己は豊満を愛すると命にかけて誓った身だ。それなのに、奈月の身体はあまりにも扇情的で、至極端的に、エロかった。

 下とお揃いで、黒に統一されたブラジャー。

 高級感のあるレース生地、その隙間から見せる白肌はいんで、奥ゆかしい。中央のリボンは神懸かって可愛らしく、何ともむず痒くくすぐったい。

 肝心の胸の方は、数値で表すのなら限りなくBに近いA。山もなければ谷もない、同情してしまうほどに――貧乳だ。

 ただ、それなのに。どうしようもないほどに。

 自分だけ知っている彼女のその小さな胸に、愉悦と優越がたまらない快楽を肉芯に刻んだ。

 とうに限界点は突破していた。

「…………ねえ、もしかして興奮してる? こんな粗末な身体でも興奮しちゃったの?」

 びくんと屹立した相棒が勝手に頷いた。そんなわけがなかろう。これは何かの間違いだ。

 己が身は、皮膚から骨の髄に至るまで、そして魂までも、豊満に捧げると誓った。にもかかわらず、十七年連れ添った相棒はあろうことか、びくんと首尾良く肯定した。

 そんなわけが……。

「い、いや。これは誤解だ……見解の不一致だ……」

 にっこりと笑う奈月は童女のようで。その日一番の嬉しそうな奈月を見た気がした。

「ふふっ。ここ最近、ずっと立宮くんを見てきた。天野さんも、有沢さんも、中原さんも。みーんな胸大きかったけど……あーあ。もうかちんこちんだよ?」

 立宮の両手は縛られているために動かすことはできない。奈月は立宮のシャツに手をかけ、やはりボタンを一つ一つ外していく。

「結構鍛えてるんだね。なんかスポーツでもやってたの? 首も、腕も、胸も、お腹も、全ての筋肉に無駄がない。作った筋肉じゃないよね? これ」

 奈月の指が身体をさする。一つ一つのかたちを確かめるように。

「それに……傷がたくさ――」

「奈月。早く解放してくれ」

 立宮の身体に何か思うところがあったようだが、その声にはっと奈月は我に返る。止めていた指を動かし、ある一点に向かう。

 女性に比べれば、何の面白みもない男の乳首だ。

「残念だが……そこはあまり感じない。世の男性のほとんどが同様だろう」

 人差し指で、乳首の先をくりくりといじる。それに飽きれば、指の腹で押し潰したり、摘まんでみたり。しかし言葉通り、反応のない立宮に奈月はやや不満顔だ。

「へえ、そうなの。ふーん」

 奈月は少し戸惑ったように口を膨らませる。何かを躊躇していたようだが、やがて決心が付いたように、己が背中に手を回す。

「…………」

 立宮の数秒の沈黙、押し黙らされたと言った方が状況に近い。奈月が背中に手を回し、ひらりと一枚の布が落ちたからだ。

 それは奈月が他人に晒すまいと隠し通していた、恥部だったはずだが。

「……どうやら認めねばならないらしい……」

 決して奈月には届かない独り言。前だけを向いて瓦解した心情の吐露。

 ――嗚呼、うるわしい。

 小振りの真白い乳房。多少なりとも下着が押さえ付けていたようで、想定よりは幾ばくか膨らんでいた。手をあてがえば、すっぽりと収まるようなお椀にも満たない丸皿。

 真白い海の上には、桜色の乳首が浮かんでいた。強がってぴんと立っているのが何とも可愛らしい。

 だから思わず「可愛い」と。そう素直に言葉を出してしまったら、その貌は恥じらいで朱に濡れていた。

「君もそんな貌をするのだね」

「え? あ。う、うるさい! 悪かったわね、あなたの好きな豊満じゃなくて」

 自分からさらけ出しておいて、咄嗟に胸を隠した。そんな年相応の乙女の恥じらいに思わず口元が緩んだ。極めて機械的で、悪魔的だった乙女の本当の素顔を見てしまったようで、胸と屹立した股間が何ともこそばゆかった。

「いいわ。何だか決心がついた」

 膝立ちになって奈月は立宮を見下す。上半身は真白く裸。下半身には未だスカートが付いていて、うつとうしそうにそれを脱いだ。

 現れた黒いショーツは濡れそぼって、しとりと蛞蝓なめくじのような通り跡が太腿を伝い、液を垂らす。

 決心がついた、つまりは準備万端らしい。

 余韻を味わう暇もなく、ショーツを下へ下へずらしていくと、薄桃色の綺麗な割れ目が露わになった。

 白無垢に浮かぶ桜色の雌しべ。華蜜を零し、いんに男を誘う。未成熟な肉感の中で、一線を踏み越えてはならないぬめかげりが、女の芳香を漂わせて、くちゅりと鳴いた。

 据え膳食わぬは男の恥。とあれば、乙女の誘いは乗って然るべきものだ。その上、相手は極上の美少女。きっと生まれた時代が違えば、一国をも簡単に滅ぼしてしまう傾国の美女として名を馳せていたのだろう。

 それだけの美貌と、そしてポテンシャルを持った何万分の一の少女。

と親の道具として傀儡に成り果てて、と自分を欺いてまで他人の造った偶像を演じ続けた。

 やがて心の亀裂を生み、何もかも壊してしまえと自暴自棄に至った。

「君は……後悔しないのか? この粘膜接触に何の意味があるのか、私には理解できない。それでも君の初めては、せめて大切な人に捧げようと思わないのか?」

 結果の分かりきった試みを口に出してみると、奈月は立宮の胸に手を付き、馬乗りに名なって体重をかけた。

「馬鹿ね。私を受け入れてくれる人間なんて、この世には存在しないのよ。それとも――」

 真白く美しい肢体。奈月は立宮の胸元にその身体を押し付ける。彼女も彼女で柔な鍛え方はしていないのだろう。触れたら簡単に折れてしまいそうなほどの華奢でもなく、包み込むような肉感と、女性らしい膨らみが、汗で滑りを帯びた立宮の肌と接触して、更なる悦楽を運んだ。

 しかし貌だけは立宮の耳元へ。吐息混じりのあえかな声で。

「――私の大切な人になってくれるの?」

 そう呟く彼女の貌は確かに笑っていただろう。

 

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