【第五話】少女×秘密=愛?【R18】【オリジナル小説】

第五話――スウィート・フール・スウィート

 グラウンド横に設置された体育倉庫。

 今は放課後ということもあり、部活動が盛んに行われている時間ではあるが、そこに寄り付く生徒の姿はない。体育倉庫は主に体育の授業で使う道具の管理をする施設だ。それ故に人影は少ないのだが、元々の立地のせいでもあるだろう。

 それだけになぜ人気の少ない体育倉庫に奈月彩華は呼び出したのか、立宮は振り払えない疑問を抱かざるを得ないようだった。

 しかし着々とその足はその場所へと向かっているようで、やがて立宮は辿り着く。立宮は両引き戸の凹みに手を掛け、がらがらと鈍いさび音と共にその扉を開いた。

 夏休みを直前に控えたむさ苦しさと、かび臭さとほこりが入り混じった特有の匂いが、熱気によって運ばれる。決して異臭と尻込みして鼻をつまみたくなるような臭いではない。

 むしろ立宮は不思議とこの匂いが好きだった。それはどことなく懐かしさを感じる匂いだからだろう。

 立宮はさび色の混じった引き戸を背に、体育倉庫を見渡す。呼び出した張本人である奈月の姿はそこにはない。授業で使うであろうボールや、高跳び用のバー。得点板に……この狭い一室に対して、不自然に敷かれた体操用マット。

 しかしその違和感は刹那の間に遮断された。ガシャンという金属と金属がぶつかり合う音が後方から聞こえ、後ろを振り返ればそこに彼女――奈月彩華は立っていた。

 百六十後半台のすらりとした体型。無駄な肉を削ぎ落とした筋肉質よりな体型ではあるが、女という性を感じざるを得ない、程よい肉付きも備えている。

 髪色は白みがかった紫色、綺麗に切り揃えられたロングヘアーは勝負だと言わんばかりに後ろで束ねられていた。

 そして何よりも立宮の目を惹いたのは、その胸だった。

「どう? これがあなたが暴いた私の本当の姿よ? 幻滅した?」

 Hカップの豊かなふくらみ(おおよそ胸パッドか何かだったのだろう)は消え、平皿を寝かせたような小さな胸がそこにはあった。

 奈月は立宮が答える暇も与えず、立宮へと一歩を踏み出し飛びかかった。仰向けのままマットの上に倒された立宮に抵抗する間はなく、腹上で正座を崩したような座り方(所謂、女の子座りだろう)で含み笑いを浮かべた奈月をただただ見上げることしかできない。

「やあ、奈月嬢。これは何とも手厚い歓迎だ。ところでそこをどいてはくれないか? そこで呼び出した用件を伺おう」

 あくまでも立宮は平然を装う。実際問題、端麗な女子に馬乗りにされて驚かない男子はおるまい。

 立宮は逃げるような視線で、奈月の鋭い双眸を覗く。ニーハイソックスを抜けた白磁気のように白くすべらかな太腿の絶対領域、その奥で刺繍の宛がわれた黒いショーツが見えてしまったからだ。

「意外にも派手な下着を好むようだね」

 立宮は敢えてその言葉を口に出してみる。恥を植え付けられれば奈月の蛮行を止められるとでも思ったからだろう。しかし、

「あら、そう。そんなにも私の下着が見たいわけ?」

 そう言って口元を三日月型に歪める奈月。白く細い指は制服のスカートまで這い、やがてその薄い一枚の布切れをたくし上げた。

 しまった、挑発させてしまった。そう思う頃には手遅れだった。

「――!?」

 しなやかな肢体から浮き出る黒き逆三角形の主張。それは絶妙を行くコントラストを艶美に描く。

 清楚を訴える白い肌は一切のしみも荒れもなく、透き通る白の先には桃色の大人にはなり切れないあどけなさを控えている。

 対して官能をささやく黒いショーツはそんなあどけなさを補完するようにそのきやしやせいえんに染める。

 それらは互いの主張を打ち消すことなくエロティックに同居し、紳士を貫く立宮を惑わせる。それは平時の粛然とした乙女からは想像することもできない光景だ。

「へえ。あなたもそんな顔をするのね。どう興奮した?」

 サディスティックな微笑み、その眼は獲物を狙う肉食獣の目付きだ。

「なぜこんなことをするのだね? よもや君のような女性が男に困っている訳でもあるまい。仕返しのつもりなのか?」

「ええ。よくわかったわね。でもあなたに対する仕返しではないわ。そうね二十パーセントくらいかしら」

 立宮はクエスチョンを頭に浮かべた。ただ困惑は心中で留め、きりりとその双眸は強く奈月の額を刺す。

「そう、これは私に対する仕返し。私は親の命令には何だって従ってきた。他人の偶像の中で生きてきた。

それは偏に私が完全無欠でいるため。完璧でない私は私ではない。だから私は完璧を演じ続けたの。この小さな胸も、心もね。だけどもう限界みたい」

 悲哀を宿した眸は虚ろなまま立宮を睨んだ。冷笑気味に歪むその口角は、たいぜんと馬乗りを続ける奈月の姿を儚く印象付ける。

「私は私が嫌い。完璧ではない私が嫌い。だけど演じ続ける私は……もっと嫌いだった。だから何もかももう――壊そうと思ったのよ」

 奈月はしなやかな白指を這わせ、立宮の頬を撫でる。やがてその指は頬から顎へ。顎から首へと移動する。たおやかに滑る柳のような細指。ぞわりと背筋をもてあそぶような悪寒が広がった。

「あなたと出会ってわかったけど、私って自分の内心を晒すことがひどくイヤみたい。だから他人あなたに自分を変えさせるってのも無理だった。勿論、私にできるのは自分を偽ることだけ。私には自分を変えられるほど強い意志も持ってないのよね」

 奈月は動じることのない立宮と視線を交わし、「だから」と話を続ける。

「私は壊すの。一度何もかも失ってしまえば、性格は変えられなくても、価値観ぐらいは変えれるでしょ? そして古い自分は捨てて、明日からは新しい自分で生きるのよ。それってとっても素敵なことだと思うわ」

 立宮は肌を撫でる奈月の指先の感触に抵抗することができなかった。下へ下へと這っていくその白き華奢は、何時しか立宮の股間に到達していた。

 しかし立宮も男だ。端麗極まりない女子に男の形を確かめるように触れられれば、期待だけで血が通ってしまう。その上、先ほど見せつけられたわくてきな光景もあってだろう。もはや立宮のソレは怒張寸前だった。

「や、止めろ……こんなこと――」

「――意味がないって? ふふ。あなたも馬鹿ね。そこに意味を見出すのは私。だからあなたは大人しく息だけをしていればいいの」

 渦を巻くように奈月の指は怒張しつつある立宮の股間をまさぐる。

「あなたは私に傷をつけるための刃。人形だった私を捻り潰す機械でしかないのよ」

 奈月は姿勢をずらし、立宮の下半身を二つの太腿で抑え込むように座る。かちゃりとベルトを外す金属音、ずるずると立宮の欲望を隠すスラックスにまで伸びたその手は、

「なつき――」

 そそり立つ一本の肉茎をあらわにした。

 

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